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コンセプト・戦略 知見・工夫・経験

中小企業に「コンセプト」を推奨する理由

このブログを書いた人:

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小笠原 裕介

株式会社ジナルカ代表取締役。マーケティング・セールス領域で機能する自己表現ツール「ビジョンキャンバス/スタートアッパー」運営。ビジネスを物語で考える人。0が近づくにつれて目が開き、0を超えると覚醒する夜型人間。朝日は苦手。IT業界20年、差し掛かるベテランの域。らしく、凛々しく頑張ります。

どうも、ジナルカの小笠原です。
今回は、僕がなぜ「コンセプト」という概念に興味をもったか、少し昔話を交えてお話したいなと思ってます。 

僕のキャリアを大きく2つに分けると、組織人として働いていた時代と、創業して自分の力で社会と向き合った時代(いまも)があります。。それぞれの視点で感じたことが影響して、企業がコンセプトを明確に持つことが成長機会を大きくすることにつながると考えました。

凡人には難しかった、数字ありきの戦略づくり

最初の経験は、僕がサラリーマンとして社会に出た約20年前です。当時はi-modeを筆頭に携帯電話(ガラケー)のインターネットサービスが急激に成長していて、無限の未来があるように見えたIT業界。どの社長もネクストビル・ゲイツを狙って、「一にも二にも上場!」と鼻息高く猛進していた記憶があります。 みんなお金の匂いのするところに、いち早く陣を敷いて、先行逃げ切りで一攫千金を狙うスタンスでした。この空気感の中で、僕も戦略を設計して推進する立場を長く担ってました。数を重ねて徐々に分かってきた感覚ですが、数字ありきで戦略をつくるというのは、僕にとってはとても難しくて、相性の悪い考え方でもありました。

それはなぜかというと…
1つ目に)社会情勢、市場の変化など、すごく広い範囲の情報を整理する必要がある
2つ目に)それらを必要に応じて深く分析する必要がある
3つ目に)少し先の未来を予測する必要がある
4つ目に)そこからお金を稼ぐ、一番の近道を見つける必要がある


これは、頭の良さで戦略の良し悪しが決まっちゃう感覚があるんです。PCに例えるとハードディスクとメモリ容量、CPUのスペックが高ければ高いほど良い。凡人が勝ちにくいゲームとも言えます。 そして、やはりお金の匂いにつられすぎると、連続的な物語を作りにくく、都度リセットされるゲーム感覚に近くなります。せこせこと培った価値や実績が、次の年には全く通用しない領域になっていて、また一から強みをつくらなくてはいけないケースもよくあります。これは毎年、新規事業をやっているようなベンチャー特有の事象かもしれませんが。デジタル導入(DX)は、人をどう活かすかの話と同じ

サラリーマン時代を終えて独立創業した直後、再びコンセプトの必要性を感じた経験があります。ジナルカは狙わずしてコロナ禍真っ最中で創業しましたので、挑戦的な計画に挑むよりもまずは経営を安定させることを念頭に、自分に出来ることなら何でもしていました。 コンサルティング事業という名目で、幸いにも紹介や伝手などで多くの中小企業様とのご縁を結ぶことができました。
様々な課題を相談されましたが、その多くはやはりDX(デジタルトランスフォーメーション)、デジタル化の支援リクエストのご相談でした。あらゆるシーンでDXは必要とされますが、オペレーションの一部DX化などに関しては、ときに今まで人が労力を割いて行っていた作業を、デジタルツールを使って自動化することなので、もちろんその作業をしていた人が、その部分では不必要になってしまいます。

社長さんはだいたい、「現状の顧客のビジネスを分析した上で、デジタルを導入するとこうなります」という新しいオペレーションフローをお見せすると喜んでくれます。ですが、深く話を勧めていき、余剰となる「リソース」が出てくると眉間にシワが寄ってきます。 

そして一部の社長はここでDX化の歩みを止めることを選びます。
なぜなら人で価値を生む領域を企業(経営)として明確に定義できていないため、人の異動ができない。デジタル化が実現できたとしても、その一連の作業に関わる人数は変わらず、追加でシステム利用料などのコストが増え、合理化・効率化を実現するはずのDXが本末転倒の結果になってしまうからです。

僕たちが貢献できなかったケースの反省を踏まえて、現在ジナルカでは一手法や部分的な課題解決事業はやらないことにしています。この先の時代、「人の活かし方」は、つまるところ「価値のつくり方」と一緒なんだと思っています。この「価値のつくり方」をちゃんと押さえるところから、一緒に考えるところからやらないと、本当に顧客にとって良い施策や手法を提供できないと実感したからです。

多くの企業は「戦略」なんてわざわざ書かない

どの企業も頭の中では戦略的で、自分たちの特徴を理解しながら、それを感覚的に使って商品やサービスを差別化していると思います。一方で、戦略策定シートや予算計画など、資料などで見える化している企業はそう多くないということを独立してから知りました。 私がこういった感覚を培った会社は、株式上場を念頭に置いた企業運営を前提としていましたし、枝葉末節まで管理された組織でした。これを当たり前に思っていましたが、多くの中小企業では、常にリーダーの声が届く距離で仕事ができるので戦略を見える化することの恩恵は少ないとも想像できます。

■大企業と中小企業の戦略運用の違い

項目

大企業

中小企業

戦略の見える化

– 中長期的な事業計画や予算計画を立てる
– 戦略策定シートや各種フレームワークを活用する
– 定期的な経営会議や報告会で共有

– 経営者の頭の中の戦略を構築する
– 必要に応じて口頭やメモで共有
– 現場の状況に応じて臨機応変に対応

戦略の実行

– 各部門・チームに戦略に基づいた目標を設定
– 定期的なモニタリングと報告で進捗管理
– 必要に応じて戦略の微調整を実施

– 経営者の指示や判断に基づいて実行
– 日常的なコミュニケーションで進捗を確認
– 状況の変化に応じて柔軟に方向性を修正

戦略の修正

– 定期的な事業評価や市場分析に基づいて修正
– 外部環境の変化に応じて中長期計画を見直す
– 修正内容を文書化、組織全体に展開

– 経営者の経験や直感に基づいて修正
– 日々の営業活動や顧客からのフィードバックを重視
– 修正内容は口頭で共有し、即座に実行に移す

意思決定の速度

– 意思決定の組織構造により意思決定に時間を重視
– 各部門間の調整や承認プロセスが複雑
– 意思決定の正当性や合理性を重視

– 経営者の為に素早い意思決定が可能
– 部門内の垣根が薄く、判断がスムーズ
– 意思決定の柔軟性や実行力を重視

組織文化

– 規則や手続きを重視する体系的な組織運営
– 組織の一体感や統一性を重視
– 変化に対する適応力は比較的低い

– アントレプレナーシップを重視
– 個人の自律性や創造性を尊重
– 変化に対する適応力は比較的高い



ただし、これからの時代は、多様な技術が世に溢れ、多くの情報から自社にとって有益なものを選び、積極的に活用していかないと生き残るのも厳しくなってきます。声が届く範囲を超えて、様々な企業や人に助けてもらう必要が出てきます。業界の垣根を超えて、頼れるパートナーがいるかいないかは、組織の成長に大きな影響を及ぼすと思っています。「頼れるパートナー」とは、新しい社員や新しい協業先・外注、いろんなかたちがあると思います。その際に、自社の方向性や考え方を理解してもらう素材は何かしら必要になります。

「戦略」はその点、有効に表現してくれると思いますが、本気で書いた「戦略」はとても情報量の多いものになります。関係の浅い読み手にとっては敬遠してしまうこともあるでしょう。理念なども良いかもしれませんが、理念だといまいち法人としてのキャラクターを示すには遠い感じがしちゃいます。会社理念、MVV(Mission/Vision/Value)、パーパスなどはずっと掲げることを前提に、普遍性を意識してつくることが多いと思うんです。なので、自己表現としては、丸めすぎていて、特徴が伝わってこない感じがします。

このような考えで、理念よりもキャラクターが見えて、戦略よりもシンプルに、企業としての方向性が示せるものがあるとよいなと思ったのが、僕の言う、ジナルカがつくりたい「コンセプト」のはじまりです

コンセプトの戦略の違いをまとめたのが以下です。

項目

コンセプト

戦略

明確性

– シンプルでわかりやすい表現
– 企業の本質的な価値観や認識を伝える
– パートナーに企業の方向性を明確に示す

– 理路整然で詳細な内容を多く含む
– 具体的な数値目標や発言に重点を置く
– パートナーにとって理解が難しい場合がある

共感性

– 企業の個性やストーリーを伝える
– パートナーとの心のつながりを築く
– 協力関係の基盤となる信頼を醸成する

– 論理的で根拠ある説明をする
– パートナーとの役割を定義する
– 協力関係のゴールを設計する

柔軟性

– 環境変化に応じて解釈や表現を調整しやすい
– パートナーと協議して適宜変更可能
– 多様なパートナーとの協力関係に適応しやすい

  • – 確定すると変更が難しい
    – パートナーとの対話よりも一方的な説明になりがち
    – 戦略の内容によってはパートナーとの協力関係が制限される

創造性

– パートナーの創意工夫を引き出しやすい
– 新たなアイデアやソリューションの創造を促進する
– パートナーとの共創、成長価値を生み出す

– パートナーの役割や貢献を限定的に定義する
– 実績や前例に基づいた提案が中心
– パートナーの創造性を十分に活用できない場合がある

浸透性

– 社内外のステークホルダーに浸透しやすい
– 企業文化の形成や共有に役立つ
– パートナーとの長期的な関係構築に定着する

– 社内の一部の関係者のみが理解している場合がある
– 企業文化との関連性が希薄になりがち
– パートナーとの関係構築には直接的な影響を与えにくい

「コンセプト」に数字と活動の目標を与えれば戦略になる

数字ありきで戦略をつくるのが僕にとっては難しいと最初の方に書きました。僕は本来、映画や小説、アニメなど、魅力的な物語へのあこがれが強くあるんだと思います。常に、〇〇〇〇が良い戦略かどうかは、他人を惹きつけられる魅力的な物語であるかどうかで判断します。行きつくところ、戦略は書くことより推し進めることが大変で、それは仲間が自走的に動いてくれるかに掛かっています。 自分が責任者として部下にこれからのことを語るには、数字から伝えるよりも物語から伝えるほうが性に合ってました。世界観とストーリーにこだわり、その上で数字をハメていくやり方です。このストーリーのプロット(あらすじ)が「コンセプト」とも言えます。

・世界のなにを救う?=世界(社会)に何を提供するのか?
・どういうキャラ?=どういう価値感を守ってやるのか(なぜやるのか)?
・武器・必殺技は?=どういう表現(商品・サービス)で届けたい?
・エンディングは?=結果、どういう影響と変化を与えたい?

書き方や表現はさておき、上記の要素を整理すれば、企業のありたい姿がなんとなく見えてきます。もう少し噛み砕くと、それは法人としてのキャラクターが持つ「一貫性」とも言えます。もし理念やビジョンがあれば、それを砕いて表現出来るようにすれば良いと思います。外部の目線を意識することなく、社長(トップ)の本音を反映し、独自の色が見えるのが、良いコンセプトの条件です。 そして、これに「活動」と「数字」の具体性を与え、「目標」を明確にしたら、「戦略」になります。

コンセプトは組織の活動において、万能的に機能します。もし自分たちの方向性が揺らいでいる気がしたら、「自分たちの物語」をあらためて整理してみてください。その物語が鮮明になればなるほど、いま自分たちが大事にすべき価値観が見えてくるはずです。では、また。


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