「へぇ」しか出ない会社説明の時間を変えたかった話。
このブログを書いた人:
小笠原 裕介
株式会社ジナルカ代表取締役。マーケティング・セールス領域で機能する自己表現ツール「ビジョンキャンバス/スタートアッパー」運営。ビジネスを物語で考える人。0が近づくにつれて目が開き、0を超えると覚醒する夜型人間。朝日は苦手。IT業界20年、差し掛かるベテランの域。らしく、凛々しく頑張ります。
初回商談で起きる「会社説明」という地獄の時間
ジナルカでは「ビジョンキャンバス」というコンセプトを表現する商品を展開しています。この商品に関しては、いろんな視点でメリットを生むことができるのですが、この商品を開発するに至ったのは僕のサラリーマン時代の原体験が大きなきっかけです。
前に戦略的なマネジメントをする上でコンセプトが必要だったことは描いた記憶がありますが、もうひとつは結構若い時分で、営業を前線に立ってやっていたときの経験です。
多くのサラリーマン、特に営業を経験された方なら共感いただけると思うのですが
会社説明の時間ってほんとにつまらないと思いませんか?
おそらく業種にもよるとは思いますが、私の記憶では大体がこんな空気感で進みます。
営業:
「今日はお時間いただきましてありがとうございます。」
「まずは弊社の説明から…」
「資本金が…社員数は…」
(パンフレットや資料の箇条書きを指さして説明…)
クライアント:
「なるほど」
「へえ」
「すごいですね」
こんな時間約10分くらい。
話し手と聞き手と立場が動くことなく、淡々と時間が過ぎていきます。
無意味だとは言いませんが、営業する側の人間が
「私達怪しくないですよ」「世の中ではこのくらい評価されているんですよ」という
一方的で、会話を膨らます余白のない、無機質な情報の注入をします。
新人研修で資料を活用せずに自社情報を言えるよう暗記させたりする上司も見たことがあります。
つまらない会社説明は商談の邪魔
新規獲得を目的とした商談であれば、なおのこと、営業マンとしては正直な熱量が必要です。売る立場としては、自分が良いもの、自信をもって届けられる商品であることが大前提です。その上で、顧客の物語を想像して、その中で情緒的に機能的にどんなメリットを与えられるのかを話します。
「熱量」「物語」「情緒」という言葉が出てくるように、相手の感情を動かしに掛かっている商談で、前段の会社概要の時間は邪魔なんです。会社情報を説明するのに、熱量を込めて違和感なくできる人は、元々熱量の高い人やテンションコントロール含めた話術の上手な人でしょう。なかなかできる人はいません。
僕は特に感情や思い入れが顔にでる正直な人間でしたので、会社説明は静かにこなしていたと思います。部下に対しても無理にでもテンション上げろとは言えるわけもなく、パンフレットツールの存在をうとましく思った記憶が強くあります。
会社説明は最低限、伝えなくてはいけない情報も含まれているので、そのものを排除して商談をスタートすることもできません。とはいえ、商談を始めるための最低限のつぶしこみとしては時間も空気も痛々しくて耐え難いものです。
そんな経験を重ねながら、商談への最高のアシストができるような、流れをつくれる「会社説明」の在り方を考えていきました。
社長だけはストーリーで語れる
まず一般的な会社概要のなにが商談の邪魔をしているのか?
それを整理してみました。
・箇条書き
・未来の話がない
・ストーリーがない
・共感を呼び掛けていない
⇒結果、話し手に起きる他人事感と、感情移入の欠如。
⇒聞き手としてエンドロールを見ているようなスタート。
汎用的で、テイクアウトできるパンフレットを想定して作られているのが基本の要件で、対面商談で使うようにそもそも作られていないんだろうと思います。会社説明資料って、自分の会社のことなのに、どこか「他人事」につくられている感じがするんですよね。
ひとりだけ。
どんな資料を使っても熱く語れて、ストーリーにして、なぜこれを売りたいかを語れる人が会社にはいます。
それは社長(創業者)です。
社長のようにだれもが自分ごとで会社のことを語るには?
なぜ現場の人間だと、どこか他人事になり、淡々とした空気になってしまうのか。
これは多分、物語で落とされてないからです。
「自分たちが(過去から現在に至る過程で)どんなキャラクター」
で
「どんなストーリー(未来)を歩もうとしているのか」
一般的な会社概要パンフレットは、これが説明できるツールになっていないのです。
社長だけはこれができます。
社長の営業って、流れるような話の展開で、いつの間にか商談に切り替わっているときがありません? 創業者には創業の想いがあり、それを自分の言葉で語れるからです。
たぶんその要因はここにあるんだと思います。
未来を語れる会社説明にする
会社説明ツールの一番大きい問題点は未来が語られていないことです。
商談は常に自分たちと、顧客(になってほしい人や企業)と、未来の話をしています。
大きいプロジェクトや商品ほど、未来をどう捉えているかわからない企業とは連携したいとは考えにくいですよね。
「僕たちは未来で●●を叶えたいから、この商品で■■を変えたいと考えている」
このような文脈で話せれば、話の内容が自然と”商談”に変化していくはずです。
私はサラリーマン時代、結果として会社で用意された会社説明ツールは使わなくなり、資料を自ら作り、営業資料と可能な限り一体化して連続性を持てるものにしていました。
これが現在ジナルカで展開するビジョンキャンバスの原型です。
物語は組織を強くしてくれる
会社を物語で語ることのメリットは、まずプレイヤーとして相手の共感性を探ることができましたし、語り手として自信を持って話すことができたことです。部下や新人の同行で、この手法を無意識でやっていくと、いつの間にか真似してくれる人も増え、チームとしての営業クオリティをあげることにも役立ったと思います。
現場そのもののクオリティ向上よりも、強く感じたメリットは、営業活動を通して未来志向のマインドセットが部下たちに醸成されていくことでした。物語思考、未来志向、戦略的視点とでも言いますでしょうか、時間軸を考え、積み重ねてきたものと、積み重ねていくものを意識して日々の活動を過ごせるようになっていったのは現場のひとつの工夫からだったように感じます。
ビジョンキャンバスも様々な用途をもって活用できる商品ですが、今回は営業力向上および営業マンのマインドを変えるツールとしての効能があるというお話をしました。今度は”採用シーン”での魅力の高め方を語りたいなと思っています。
またぜひ読みに来ていただければうれしいです。それでは。