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株式会社ジナルカ / Ginalca Inc.
Marketing Starts in You.

商品力の”優位性”を解く「価値・便益・機能」の三層分析

▼この記事はこんな方におすすめです

  • 過去実績のあるサービスの課題がうまく見えていない
  • 商品やサービスの中身には自信があるのに、前ほど選ばれなくなったと感じている経営者の方
  • 見直しの会議が、いつも「何を足すか」「どの手段にするか」の話で終わってしまう方
  • 新しい取り組みを始めるとき、何から決めればいいのか迷う方

 

「商品力は上がっている。なのに、売上は下がる一方。」

そんな感覚、ありませんか。

この記事では、ある会社のセミナー事業を一緒に見直したときの話をもとに、僕が新しい取り組みの土台として使っている「価値・便益・機能」という三層の考え方をお渡ししたいと思っています。英語の頭文字をとって、VBFと呼んでいます。

先に結論だけ置いておきます。

機能は会社が持っているもの。便益は顧客に起きること。価値は顧客が感じるもの。

この三つが混ざったままだと、見直しの議論はなかなか前に進みません。

「オンラインか、会場か」で止まっていた

医療従事者向けの専門出版社で、セミナー事業の見直しをご一緒したときの話です。

この会社のセミナーは、会場で開く形で長く支持されてきました。広い会場、現役医師の講義、手で触れる教材、昼食のお弁当や膝掛けまで行き届いた運営。何度も足を運ぶ常連の受講者もいました。

そこにコロナ禍が来ます。セミナーはオンラインに移りました。

会場では、受講者の表情や熱量が目の前で見えていました。それが次の企画の拠りどころだった。オンラインでは、それが見えにくい。世の中には無料のオンラインセミナーも増えていきます。

見直しの議論はされていました。オンラインか、会場か。どう組み合わせるか。

どれも大事な論点です。ただ、全部手段の話なんです。会場で開いていた頃に、自分たちが何を届けていたのか。そこを言葉にしないまま、形だけが先に変わっていました。

受講者は、何を買いに来ていたのか

そこで、担当の方お一人ずつと、過去のセミナーを振り返る対話を重ねました。

最初に出てきたのは、「実践的な知識を、質の高い講師から学べる」という言葉です。間違っていません。でもこれは、会社が持っているものの説明です。

問いを変えました。常連の受講者の顔を、何人か思い浮かべてもらったんです。その方は、どんなモヤモヤを抱えて、自分のお金と休日を使って来ていたのか。

手がかりにしたのは、受講後のアンケートに残っていた受講者自身の言葉です。

そこにあったのは、向上心の話ではありませんでした。

「一度怖い目にあった」「自分のミスで患者さんに迷惑をかけたくない」。現場で失敗したくない、自分の判断に自信が持てないという、切実な不安です。

受講者が買いに来ていたのは知識そのものというより、不安を、明日からの実践への確信に変えることだったのではないか。そう仮説を置いてみると、広い会場も、講師も、教材も、お弁当も、すべて「確信を持って現場に戻ってもらう」ための手段として一本につながりました。

もうひとつ、対話の中で立ち返ったのが言葉の意味です。「セミナー」は、ラテン語の seminarium、「種床・苗床」という言葉にさかのぼるそうです。そこから考えると、教える場というより、何かが育つ場とも捉えられる。

大小を問わず、何かを変えなければならないとき、「そもそも」を疑うのはセオリーだと僕は思っています。語源はそのとき、変えずに貫く部分と、動かしていい部分を分ける、ひとつの物差しになります。「育つ場」であることは貫く。会場かオンラインかは、動かしていい。

「価値」と「便益」は何が違うのか

ここで一度、言葉を整理させてください。

「価値」は便利な言葉です。便利すぎて、会議では「強み」や「品質」とほぼ同じ意味で使われます。一方で、マーケティングに詳しい方は「顧客に起きる良い変化」の意味で使うことが多い。同じ言葉が、会社の持ち物にも、顧客の変化にも使われているんです。

僕は次の三層に分けています。

VBF(価値・便益・機能)の三層構造。つくるときは上から、見直すときは下から
図1|価値・便益・機能の三層(VBF)

 

価値:顧客が感じるもの。作り手が書けるのはその仮説で、「だれが、どんな状態から、どんな状態に変わりたいのか」の形で置く

便益(ベネフィット):顧客に起きる、外から確かめられる変化。この記事では、できること(機能的便益)、気持ち(情緒的便益)、見られ方(社会的便益)の三つに分けます

機能:便益を大きくする、または便益を得るための負担を小さくする手段。商品の仕様だけでなく、人の技術や運用のルールも含む

「確かめられる」は、数字になるという意味ではありません。「安心できた」という気持ちの変化も、本人の言葉や、職場で相談される回数という形で外に現れます。

価値と便益の線は、作り手が設計できるかどうかで引いています。便益は設計できる。ここでいう設計は、どんな変化を起こしたいかを定め、起きたかどうかを確かめられるようにしておくことです。その変化を実際に生むのが、機能の仕事になります。

価値は設計できません。顧客が手に取って使ったときに、初めて感じるものだからです。作り手が持てるのは「この人は、この変化を求めているのではないか」という仮説までで、本当にそうなのかは顧客に確かめるしかありません。

「価値」という言葉は、文脈や文献によって指す範囲が変わります。この分け方はあくまでジナルカなりの解釈だと、補足しておきます。

便益は、目減りする

では、なぜ選ばれにくくなったのか。

効いてくるのが真ん中の層です。便益には代わりがあります。同じ変化を、別の手段でも得られる。

担当の方々と、受講者に起きる変化を六つに絞り、AI、YouTube、eラーニング、SNS、専門書、メーカー主催の無料セミナーと一つずつ見比べました。

担当の方々の見立てでは、要点を絞った知識を得るだけなら、AIや検索のほうが速い。基礎を学ぶなら、動画や無料セミナーのほうが安い。一方で、「同じ悩みを抱える人がいると感じられて、孤独感が減る」という変化は、AIにも動画にも置き換えにくい。

セミナーの中身が悪くなったわけではなかった。届けていた変化の一部が、他の手段でも手に入るようになっていたんです。

ただ、代わりがききにくいことと、買う理由になることは別です。その変化が顧客にとって重要でなければ、選ばれる理由にはなりません。だから便益は二つの軸で仕分けます。

便益を顧客にとっての重要度と代わりのききにくさの二軸で仕分ける4象限の図
図2|便益を「重要度」と「代わりのききにくさ」で仕分ける

右上が、限られたお金と時間を寄せる有力候補。顧客にとって重要で、代わりがききにくい便益。僕は、これが商品力の”優位性”の中身だと考えています。左下は、やめる候補です。実際に寄せるかどうかは、自社に実現できるかを機能の層で見てから決めます。

正直に書くと、この事業で確かめられたのは横軸までです。どの便益がどれだけ重要かは担当の方々の見立てで、受講者本人にはまだ聞けていません。代わりの手段にも、「職場の先輩に聞く」「何もしない」が入っていませんでした。会場に足を運ぶ負担が増えた、研修費の出どころが変わった、という別の原因もありえます。受講者に聞いて「知識そのもの」が今も一番の理由だと出れば、この整理は組み直しです。

機能は、最後に決める

寄せる先の便益が見えてから、ようやく機能の話に戻ります。

「学んだことが現場で定着する」ために、一か月後に同じ講師へ追加質問できる座談会。「孤独感が減る」ために、新人だけ、教育担当だけを集めた少人数の対話の場。こうした案が出ました。新しい商品をゼロからつくる話ではありません。今ある講座の包み方と、届ける相手を変える話です。

最初の会議と同じ「手段の話」に戻ってきました。でも、今度は物差しがある。「何を足すか」だけでなく、「何を残し、何をやめるか」まで話せるようになります。

つくるときは、価値、便益、機能と上から下ります。設計して実行に移す段階です。見直すときは逆で、下から上る。運用して修正する段階では、まず機能のやり方を直し、それでも変化が起きなければ便益を選び直す。上の層ほど、やり直しが大きくなるからです。

ただし、顧客や市場そのものが変わった兆しがあるなら、価値の仮説も早い段階で疑います。今回の事業がまさにそうでした。コロナ禍で学び方が変わり、AIが出てきた。だから機能の手直しではなく、いちばん上の「何を届けていたのか」から問い直したんです。

このブログも、同じ三層で決めました

これはセミナーや商品に限った話ではありません。実はこのブログも、始める前に同じ三層で土台を決めています。

マーケティングの理論や業界の動きを論じる記事には、それぞれの役割があります。ただ、ジナルカがお付き合いしているのは、経営者自身が営業も採用も現場も見ている規模の会社です。読み終えたあとに、自分の会社で使えるものを渡したい。そう考えて、こう定めました。

価値の仮説は、「問い合わせが増えない」「広告が効かない」と感じている経営者が、人任せにせず、自分の会社の売り方を自分で判断しようとする状態に変わること。

便益は三つです。

  • できること(機能的便益):ひとつの困りごとを、いくつかの原因の見立てに分けて、自社の数字で確かめられる
  • 気持ち(情緒的便益):「広告が悪い」「担当者が悪い」と決めつけずに、納得して優先順位を決められる
  • 見られ方(社会的便益):外注先や社員に、なぜそう判断したかを自分の言葉で伝えられる

そしてブログでの機能は、記事の書き方のルールです。経営者の疑問から始め、用語の解説からは始めない。原因を一つに決めつけない。根拠と一緒に、その見立てを疑うべき条件も書く。

この記事で、事例がまだ担当者の見立てにとどまっていることや、整理が組み直しになる条件を書いたのは、三つ目のルールによるものです。

上の二層を先に決めたので、やらないことも決まりました。道具の使い方だけを解説する記事は書きません。どの便益にも線が引けないからです。

このブログの便益が本当に起きているかは、これから確かめていく段階です。僕たちもまだ仮説の上にいます。

機能を足す前に、確かめたいこと

良いものなのに、なぜ前ほど選ばれないのか。

あなたの会社で今いちばんお金をかけている機能は、顧客のどんな変化のためのものでしょうか。その変化は顧客にとって重要で、他の手段では手に入らないものでしょうか。

三層に分ければうまくいく、という話ではありません。価格や立地で勝負が決まる商売もありますし、機能の差がそのまま選ばれる理由になる分野もあります。それでも、機能を足す前に上の二層を確かめておくと、無駄打ちはかなり減らせると思っています。

機能は会社が持っているもの。便益は顧客に起きること。価値は顧客が感じるもの。

これがジナルカなりの捉え方です。新商品でも、ホームページの作り直しでも、「何をやるか」より先に決めるのは、「だれに、どんな変化を起こすか」だと考えています。採用なら、相手が顧客から求職者に変わるだけです。


もし、自社の便益をどこから整理すればいいか迷っているようでしたら、一度ご相談ください。答えをお渡しするためではなく、三層を一緒に並べてみる時間としてお使いいただければと思います。

ではまた。

このブログを書いた人:

小笠原 裕介

ITサービス事業会社でマーケティング歴20年。CyberAgent→UNIMEDIA[執行役員]→カラダノート[取締役COO]。新規事業開発、事業戦略策定、マーケティング、セールスに長く携わっていました。ジナルカでは中小企業に特化した、コンセプトドリブンなマーケティング支援を行っています。

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